時計探訪記 〜ニューヨーク編〜

2025.02.04 Journal by Wolf and Wolff

今週はニューヨークに。さてここは絶対来たかったTemakiスタイルのお寿司屋さん。カフェのようなカジュアルな空間で提供される全く新しいスタイルの寿司、通称「Neo寿司」。
世界的なお寿司ブームにも成熟感がある今、これまでの伝統を打ち破るような、と言うよりカリフォルニアロール時代に回帰したような、なんにせよ新しいSushiスタイルが今面白い。レートを考慮しても手頃で、そんでもって美味しい。

一番パンチがあったのはタイ料理みたいなTemaki。もはや魚ですらありません。
こういうお店は今日本にあるんですかね。あったら流行りそうですが。まるでこち亀の両さん的なスタイルというか、楽しいランチになりました。

食後はSOHOにある革靴のセレクトショップ”Leffot”に。実はこのブティックには裏メニューがあるんです。それはオーナーであるStevenさんが蒐集したヴィンテージウォッチのコレクション。昔ブラウンダイヤルのターノグラフを買ったり、あとサブマリーナを買ったのですが、このような時計屋さんではないファッションのプロが好む個体というのは実に個性的なフェイスだったりするから面白いわけです。

この日丁度Stevenさんがいて、合言葉の「show me the watch」を。しかし残念なことにcovid-19がニューヨークで猛威を振るった2020年のあの時期、時計の商売はクローズしたとのこと。
でも当然まだコレクターではあるので、今何が欲しいとか、あそこが売りに出してるあれ見た?とか、情報交換をしました。

この日彼が巻いていたギルトダイヤルのGMT-MASTER。サークルが入り、さらに6時下にドット夜光が付いていることから1962年頃のGMTであることが推測されますね。そして不思議なもんで、これは最近手に入れたものではなくて、おそらくずっとずっと以前から所有している時計だろうなと、なにかそういう空気が感じ取れませんか?身体の一部になってる、そんな一体感を。「こういう大人になりたい」を思い出させてもらった昼下がり。

そのあとはRRLに。ニューヨークが一号店でしたっけ?ここが確かそうなはず。
ここにもたまに良いヴィンテージ時計が置かれていたりするんですよ。僕も10年くらい前にブラウンのGMTを見つけて買わせてもらったことがあります。しかしこの日は特になく。
しかしあれですね、このような空間で、インダストリアルなショーケースの中でミリタリーのドッグタグやゴールドフレームのレイヴァン、ZIPPOなどと共に並べられたヴィンテージロレックスというのは今逆に新鮮。かつてGMTかサブマリーナかエクスプローラー1の3択しかなく、分かってる人はエクスプローラー2やスピマスを着けていた、まだ何もかもがシンプルだったあの時代を思い出しました。

別のラルフローレンのお店のレジにて。思わず写真を撮らせてもらった。
アクセサリーの付け方、上手い人ってほんとうに上手ですよね、こっちの人って。この薬指のレイヤーされたリングスは、最初の一本が祖母の形見で、そのあと母の、さらにマリッジや、子供からのギフト、などなど、彼女にしか出会えない人生のページで構成された7本のゴールド。つまりは「one week」と言っていた。なんて素敵なエピソードなのでしょう。十字架のシルバーブランドに並んでいる人たちの耳元で拡声器で聞かせてあげたい。

さて、そういうスピリットに理解がある方にこそ、こういう時計はいかがでしょうかと提案したくなりますこちらのエアキングは先週シンガポールで買い付けたもの。
Ref.5500 Air-Kingは、わかりやすい迫力が無い代わりに「人を選ぶ時計」。この日マンハッタンで会ったStevenさんやラルフの素敵なマダムに然り、エアキングという時計はかつては文化人にも愛されていたわけで、そういう目には見えない説得力のようなことにもラグジュアリーは存在すると僕は思うのであります。

今回滞在したニューヨークでは、勿論時計屋さん、ディーラーのオフィスなどまわり相変わらず時計探しはしておりましたが、結局、詰まるところ何故僕はヴィンテージ ロレックスに依存しているのだろう、何を伝えたいのだろう、というちょっと本質的なことを考えさせられる再会や出会いがあった数日間でした。

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