時計探訪記 〜パリ 前編〜
2024.10.19 Journal by約束の時間。建物入口のインターホンで施錠を解除してもらい、ミシミシメキメキとちょっと心配になるくらいの音を立てながら薄暗い小さな螺旋階段を上がってゆく。
この良い意味で全く似つかわしくない場所に巣を構える理由は、当然カモフラージュさせる目的もあるのだと思う。しかし、インディペンデントだが良い仕事をする職人のアトリエに来ているようなこのムードは嫌いじゃない。
ギーッとドアを開けた先にはいくつものショーケース。ガラスの向こうには沢山の黒い顔、白い顔、金の肌。お行儀よく並べられている。
このように一般向けではなくfor professionalな現場であったとしても、本当に珍しいもの、魅力的な時計は顧客とアンダーザテーブルで取引されるため、インスタグラムで簡単に出てくるような明らかに凄い時計がボカボカ置いてあるということはない。ただラッキーなことにいくつか手巻き時代のDAYTONAを持ってきてくれた。
共に1970~1980年代の、DAYTONA生誕から10年以上経過しようやくデザインがフィックスされ、完成度が最も高いと言われる通称”Big Red”ですね。サイズは37mmとこの情報量に対し大分コンパクトで、そして何より金額の重たさを全く感じさせない、不安になるほどの重量感(軽いんです)であることも、セレブリティ要素の強い現行機種とはまるで異なる控えめな存在。このあたりの良い個体はいつも探してて、でもいつも買えるものでは勿論ないのだけど、見せてもらうだけでも十分に贅沢なひと時なのです。
他にも、とにかくあるものは全部案内してもらった。残念ながら今回は収穫は無し。でもこういう席で何気なく教えてくれる今後の市場の動向というか、業界を牽引するディーラー達は今何を考えているかというか、そういう生きた情報が聞けるのが一番の収穫かもしれません。ただ、僕は好みがハッキリしている方なので殆ど関係なかったりします。どんな状況下でも、条件さえ合えば欲しいものは欲しいので。
フランス、ということでこの日のランチはフォアグラでした。壁に取り付けられたかなりの大きさのアンティークのミラーを見て、あれ、ここ絶対来たことあるって、記憶を整理してたら10年以上前に来てました。その時もこれ食べた、たしか。
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