時計探訪記 ~The Timepiece of Alma Arlene Davis~

2026.08.02 Journal by Wolf and Wolff

今日ご紹介する時計には、一人の女性パイロットの人生が刻まれている。

アメリカ航空史を代表する女性パイロットの一人、アルマ・アーリーン・デイビス(1910-1964)が生前に愛用していた1940年製のMovadoのクロノグラフ、”M90”。
この時計は2021年にオークションハウスAntiquorumにて競売にかけられ、その後Ali Neal氏のプライベートミュージアムに所蔵されました。それが今、巡り巡ってなんとWolf&Wolffに。

しっとりとしたベージュカラーに経年変化した元ホワイトダイヤル。テレメーター及びタキメーターは青磁を思わせるペールブルー。インデックスはブレゲスタイル。小振りな32mmのYGケースは金焼けを引き起こしている。
そして裏蓋には”Arlene Davis”。あと、彼女のパイロットライセンス番号がエングレービングされている。
ストーリー性は間違いなくスペシャルだが、その背景に引けを取らないこの美しいパティーナ。普通は変色に比例して汚れなどが目立つものですが、これはちょっとすごくないですか。ここまで上品なこの時代のMovadoはなかなか無い。

詳しくはWikipediaにも記述されていますが、アーリーンは1931年にパイロットライセンスを取得し、女性として初めて多発機(4M)資格を取得するなど、女性航空界のパイオニアとして知られています。数々のエアレースに出場し、その功績は航空界で高く評価されました。

当然、このように特別なファーストオーナーを持つ腕時計というのは通常より高く評価されます。とはいえ、彼女のような航空史に名を残した人物の場合、著名タレントの所有品のような話題性とは異なる価値を持つため、プレミアムが青天井になることはありません。
本来むしろ逆なんじゃないかと僕は思ったりするのですが…。

アーリーンのこのM90、もし買い手が現れなかったら、オークションハウスに相談するか自分のコレクションにしてしまおうと考えている。
僕のものになったら、おそらくデザインがマッチするブレスレットを探す旅が始まってしまうだろう。それはたぶん長い…。

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