時計探訪記 ~ロンドン編~

2025.10.16 Journal by Wolf and Wolff

Ref.1016を初めこれまでに何本ものヴィンテージエクスプローラーを仕入れてきましたが、そのうちのいくつかはここロンドンに住むコレクターから買わせてもらっている。その男はおそらくこの地で最も数多くのエクスプローラーをコレクションし、そしてこのモデルに取り憑かれてしまった、「究極のスタンダード」の犠牲者である。

泥が飛んだジャーマントレーナーを履いた脚を組み、この雑多な町Pubのカウンターで次から次へと様々なリファレンスのエクスプローラーを黙々と並べる。その数センチ横では泡が滴る1パイントのビールがサーバーへと忙しなく運ばれていた。豪華で眩しい高級時計が、ただの古びた腕時計へと本来の姿を取り戻す。

どれも息を呑むほどクリーンなダイヤル。そして時折珍しいブレスレットが装着された個体も。長髪を耳にかけ直しながら年式と、watch onlyとかwith paperとか、簡単な概要だけが伝えられる。
一本、65年製のBoy’s EXPLORER(当時英国市場限定で販売されていた34mmケースのエクスプローラー)が中でも抜群だった。63年以前のダイヤルを、後からディテールを追加し強引に65年製としてしまう、この時代のROLEX特有のイレギュラーなダイヤルが搭載された個体。コンディションはビシビシのいわゆるバリ物というやつだ。

彼はコレクターであってディーラーではないのでどれでも売ってくれるわけではありません。しかし15年間自身で所有したこの時計に関しては手放しても良いとのこと。本当はこの足ですぐに持って帰りたかったのですが、お恥ずかしい話、すでに1016を一本在庫していたのでそれが決まらない限りは買うことができませんでした。

翌週帰国し、無事1016は次のオーナー様へと渡ることが決まり、今まさにこれを引こうと連絡を取り合っています。が、今日いきなり針が動かなくなったとのことでこれからロンドンのウォッチメーカーにメンテナンスに出すそうなので僕の手元に来るのはまだ少しかかりそうですね(15年間未メンテ)。

こういうタイミングで止まるんだなとちょっと不思議な気分。一旦役目を終えたのだな、というか。

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